2008年7月4日08:00:00
●税務上の取り扱い
法人税法上、新会計基準の適用に伴い、所有権移転外ファイナンスリースは原則売買処理に改正されました。
但しリース資産について、借り手が賃貸料として損金経理した場合、その金額がリース期間定額法により計算した償却限度額と同額であれば、償却費として損金経理した金額に含まれると規定されました。
「償却費として損金経理した金額」に含まれるとされた金額については、その事業年度の確定申告書における「リース期間定額法による償却額の明細書=法人税別表十六(四)」の添付が免除されます。
つまり、法人税別表四における申告調整及び、法人税別表十六(四)への記載が不要となるわけですね。
・固定資産税は従来どおり、リース会社が申告・納税する取り扱いが維持されます(会計処理は変わっても、リース資産の所有権はリース会社にあるため)。
・租税特別措置法、リース税額控除は廃止になりました。
・消費税の取り扱い
原則売買処理に準じた処理となるため、リース資産を引き渡した時点でリース料全額が課税売上げ又は課税仕入れとなります。従来では、各課税期間において支払リース料の額を基準に課税売上げ・課税仕入れを計算していましたが、改正後はリース取引開始時にリース料総額を課税売上げ・課税仕入処理をすることになります。
●減価償却方法(賃借人側の処理)
所有権移転外ファイナンス・リース取引における賃借人のリース資産の償却方法は、リース資産部分についてはリース期間定額法(償却期間をリース期間とし、残存価額をゼロとする定額法)で減価償却し、支払利息部分については原則として利息法で費用計上することになります。
当期のリース期間
リース期間定額法=(リース資産の取得価額-残価補償額)×----------------------------------
リース期間
※リース期間とは、リース取引に係る契約において定められているリース資産の賃貸借の期間をいいます。
※ 残価保証額とは、リース期間終了時にリース資産の処分価額が所有権移転外リース取引に係る契約において定められている保証額に満たない場合に、その満たない部分の金額をその取引の借手が、貸手に支払うこととされている場合のその保証額をいいます。
●影響
・これまで貸借対照表に計上されていなかったリース資産・リース債務を貸借対照表に計上することになるため、自己資本比率が低下することになります。
・リースにメリットがある(1)事務処理の利便性(2)ROAが高くならない等がなくなることにより、上場会社等は、リースではなく自社での借入や割賦による資金調達に変更すると思われます。
・リース契約時にリース支払い総額を算定しなければなりません。
・消費税も総額で契約時に処理しなければなりません。
●運用開始
新リース会計基準の適用時期平成20年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度から適用されます。
(法人税法・消費税法・租税特別措置法は同日締決したリース契約から)
ただし、四半期決算については、1年猶予され、平成21年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度から適用されます。
新リース会計基準の適用に伴い留意すべきこと、の記事はここまでです。
次回は消費税についてお話したいと思います。
[ テーマ: 消費税 ]
2008年7月16日08:00:00
■消費税とはどんな税のこと?
・消費一般に広く公平に課税する間接税で、企業が行った取引に対して課税される税金のことです。
消費税を負担するのは消費者ですが、消費税を申告・納付するのは、その商品の販売やサービスの提供を行った事業者となります。
つまり、
1)事業者が消費者から、取引をした際に「消費税」を預かる
2)事業者が仕入れなどの取引時に「消費税」を支払う
1から2を控除した額が、納付する消費税となります。
この計算は、商品等の流通過程において二重、三重に課税される事がないようにするためのものです。
消費税は、消費者から一時的に預かっている税金です。
もし滞納した場合は、納付期限の翌日から起算して1か月を経過する日までは税額に年7.3%、1か月を経過する日の翌日から納付の日までは、年14.6%を乗じて計算した金額が延滞金として加算されてしまいます。しかもこの額は損金算入ができません!
滞納すると大変なことになってしまいますので、くれぐれも滞納することが無いように気をつけましょう。
■課税事業者の判定
消費税を申告・納付するのは、事業者のうち次のいずれかに該当する者です。
・基準期間における課税売上高が1.000万円を超える事業者
=つまり、基準期間の課税売上高が1.000万円以下の事業者は、「免税事業者」となるわけですね。
・「消費税課税事業者選択届出書」を提出して、「課税事業者」を選択している事業者
■では、納税義務の具体的な判定について説明していきます。
会社に消費税の納税義務があるかどうかを、事業年度ごとに判定します。
事業年度の前々事業年度のことを「基準期間」といいます。
この基準期間の課税売上高が1.000万円以下の場合は、その事業年度の納税義務が免除されます。
上記の判定で
納税義務が免除された会社:免税事業者
納税義務が免除されない会社:課税事業者
といいます。
また、基準期間の課税売上高は、
・基準期間が免税事業者である場合:課税売上高=消費税等込みの売上高
・基準期間が課税事業者である場合:課税売上高=消費税抜きの売上高
となります。
◇新規に開業した場合の特例
・新規開業年とその翌年は、基準期間の売上がないため、原則として免税事業者になります。
※ただし、資本金の額または出資の金額が1.000万円以上である法人は、その基準期間のない事業年度の納税義務が免除されません。
また、設立2期目でその事業年度の開始日の資本金または出資の金額が1.000万円以上になる場合も同様です。
◇基準期間が1年に満たない場合は?
基準期間の課税売上高を1年分に換算して判定します。
下の数式で計算します。
12
(基準期間の課税売上高)×-----------------------------------------------
基準期間の月数(1月未満切り上げ)
課税期間の基準期間において
・課税売上高が1.000万円を超えた事業者は、「消費税課税事業者届出書」
・課税売上高が1.000万円以下の事業者は「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」
を、すみやかに納税地の所轄税務署に提出する必要があります。
◇課税事業者の選択
免税事業者となる場合でも、「消費税課税事業者選択届出書」を提出することにより課税事業者となることができます。
ではなぜ免税業者が課税事業者をわざわざ選択するのかといいますと・・・
設立1期目や、多額の設備投資により、売上に対する消費税より、仕入に対する消費税が多くなってしまう場合があります。
ところが免税事業者は、消費税の申告書を提出しても、消費税の還付を受けることができません。
こういった場合に、課税業者を選択することにより、仕入に係る消費税が売上に係る消費税を上回る部分の消費税の還付を受けることができるわけですね。
注意しなければいけないことは?
※「消費税課税事業者選択届出書」は、課税事業者となりたい課税期間開始の日の前日までに、所轄税務署長に提出しなければなりません。
※また、この届出書を提出した事業者は最低2年間、免税事業者に戻る事はできません。
◇消費税課税事業者選択をやめるには?
「消費税課税事業者選択不適用届出書」を、やめようとする課税期間開始の日の前日までに提出しなければいけません。
この届出書を提出しないと、「消費税課税事業者選択届出書」の効力は永久に続いてしまいます。
例)
設立事業年度に「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、その後基準期間の課税売上高が1000万円を超える状態が続いていた。
しかし、第5期に課税売上高が1000万円を超えなかったため、第5期を基準期間とする第7期は免税事業者となれるわけですが・・・
第7期開始の日の前日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しなければ、「消費税課税事業者選択届出書」の効力が継続したままになるため、第7期も免税業者になることができないわけですね。
☆届出書の注意点
消費税に関する届出書にはいくつか種類がありますが、届出の期限を間違えると適用されず、納税額が大幅に変わってしまいます。
「消費税課税事業者選択届出書」・・・適用課税期間開始の日の前日(新規事業開始の場合は、開始課税期間の末日まで)
(来期の4/1から適用しようとする場合は、今期の3/31までに届け出ることを忘れずに!)
「消費税課税事業者選択不適用届出書」・・・選択をやめる課税期間開始の日の前日まで
「消費税課税事業者届出書」「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」
「消費税の新設法人に該当する届出書」・・・の3つは、速やかに提出すること、となっています。
消費税を納める義務があるかどうかの判定図です。