[ テーマ: 法人税 ]
2006年11月22日10:30:00
使途不明金と秘匿金
なんとなくなじみのあった前回までの項目と比べ、急にタイトルが重くなりましたね。
しかしここの部分、税金のかかる度合いが大きく変わってきますので、かなり気をつけていないといけない項目でもあります。
1)費途不明の交際費等とは
法人が支出した交際費・機密費、接待費、旅費等の金銭でその使途が明らかでないものをいいます。
また、役員に対していわゆる「渡しきり交際費」という形で支出した場合には、その費途が不明であるもの又は法人の業務に関係がないと認められるものは、役員に対する報酬や賞与と認定され、役員個人に所得税が課税されます。
ちなみに、毎月定額支給される渡切交際費等については報酬とされ(適正額の範囲内であれば損金算入)、それ以外は賞与となります(損金不算入)。
使途不明金は交際費とは扱わず全額が損金に算入されないため、交際費の損金参入限度額の枠が残っていても課税をうけることになってしまいます。
2)使途秘匿金とは
金銭の支出(贈与、供与その他これらに類する目的のためにする金銭以外の資産の引渡しも含まれるもの)のうち、相当な理由なく相手方の氏名、名称等を帳簿書類に記載していないものをいいます。つまり、その金銭の支出の使途を明らかにしないものをいいます。
ただし、次のものは使途秘匿金には含まれません。
(1)相手方の氏名等を帳簿書類に記載していないことに相当の理由があるもの
相当の理由があるかどうかは、その都度基準に照らし合わせての判断となります。
相当の理由がある例としては、不特定多数の者との取引で相手方の氏名等が分からない場合や、不特定多数の顧客を相手とする事業者への支払のように、相手方の氏名等まで帳簿書類に記載しないのが通例となっている場合などです。
(2)資産の譲受けその他の取引の対価(ただし額が相当であると認められるもののみ)として支出されたものであることが明らかであるもの
相手先の氏名等を記載していない場合でも、商品の仕入のように取引の対価の支払であることが明らかな支出で、その支払額が対価として相当と認められる金額であれば使途秘匿金から除かれます。
使途秘匿金は、損金に算入されないとともに、通常の法人税に加え秘匿金課税として支出額の40%が追加で課税が行われます。
また、支出額が課税対象になるため赤字で法人税の納付がない企業でも納めなければなりません。
支出額に法人税と秘匿金課税が2重でかかり、結果として支出額とほぼ同額の税金がかかる結果となってしまいます。
したがって、使途の不明な支出が使途不明金に該当するか、使途秘匿金に該当するかにより法人の税負担にかなりの相違が生じるわけです。
費途不明の交際費等と使途秘匿金の相違って?
両方とも、法人が支出した金銭であることは一致するのですが、使途秘匿金は金銭の支出に「贈与・供与その他これらに類する目的のためによる、金銭以外の資産の引渡し」が含まれます。
また、使途秘匿金は、法人が金銭で損金経理したものに限られず、貸付金・仮払金・固定資産などとして資産計上されたものも含まれます。費途不明の交際費等は、交際費等として損金経理されたものに限られます。
・・・というわけで。
自分には秘匿金なんて関係ないよ、とお思いの方もいらっしゃると思いますが、税務調査などが入った場合、
過去の書類でその時に支出したお金は何のために使ったのか分からなくなってしまったもの。
分かっていてもそれを証明できる領収書がないもの。
取引の相手がわからなくなってしまったもの。
などの場合には、それらのお金は使途秘匿金として扱われてしまう可能性があるので、帳簿や領収書などの管理は日々まめに行っていきましょう。(帳簿が不整備ということで青色申告の承認が取り消される可能性もあります。)
次回は個人事業者の交際費と、今まで何度か出てきた言葉「損金算入限度額」についてお話します。
|この記事のURL│